Project

ベトナム農業事業
プロジェクト

JVAT Project
ベトナムでの菊づくりを通じて、“三方良し”を実現した海外拠点ビジネス

弊社では、貿易商社として極めて珍しい農産物の生産事業にも取り組んでいます。その中核を担うのがJVAT(Japan Vietnam Agritech Farm Co.,Ltd.)、弊社がベトナムに設立した現地法人です。海外における日本発の大型施設園芸は最初で最後ではないか。そんな思いのもと開始した菊栽培プロジェクトは、困難の連続でした。

未開拓の広大な土地に見出した、菊づくりの可能性

日本で最も消費量の多い花は、菊であることをご存知でしょうか。その一方で国内の生産量は、農家の高齢化・後継者の不足等により、残念ながら年々減少の一途を辿っています。オーシャン貿易は日本において切り花の草分け的な輸入業者として1974年より切り花の輸入を開始しています。しかし、年々日本の品質レベルに合った菊を安定供給できる産地の確保が困難になってきました。
この状況を打開するために、会長の米田は自らの手で菊作りの農場を立ち上げることを決意し、2007年より世界各地で最適な場所を探しを始めました。十分な日照量があり、真面目に生産に取り組んでくれる従業員が確保できる場所。この2点を絶対条件に探し続けた結果辿り着いたのが、ベトナムの高冷地ダラットです。
2008年に13haの広大な土地を取得し、自社農場の設立準備に着手。
当初は農地開拓を現地ベトナムの業者に外注する予定でした。しかし、オーシャン貿易が求める高い技術水準で工事を進めることは、困難を極めることに。
日系大手ゼネコンに外注するという選択肢もありましたが、初期投資額の試算は膨大に。お客さまに満足いただける値段で菊を納品できないと判断し、農地開拓の段階から一貫して自分たちの手で行うという結論を出したのです。ベトナムに法人を設立し、「JVAT(Japan Vietnam Agritech Farm Co.,Ltd.)」と命名。プロジェクトは本格的に動き出しました。

果敢な挑戦が招いた災難

事業は、2008年10月、土木建設用の重機・鋼材加工用プレス機等の機械類・各種道具類を購入するところからスタート。2009年1月からは、重機を用いての荒地の開墾から土木・建設・電気・潅水等の工事、土地の測量・設計、ハウス部品の製造・組立に至るまで、メッキ以外は全て会長自らが陣頭指揮を執ることに。職業訓練所の所長のごとく、田舎で暮らす未経験の純朴な青年に一から丁寧に指導し、組織全体の能力の底上げを図っていきました。
工程は予定通り進みましたが、同年9月18日、会長の米田は思いもよらぬ災難に見舞われます。雨の中、自ら重機を操り、トラックから鋼材を荷卸していた際にバランスを崩して地面に落下。強く全身を叩きつけられ、頸髄(けいつい)を損傷という大けがを負ったのです。現地のホーチミンの医師には「もし手術がうまくいったとしても、一生車いすの生活です」と宣告されましたが、米田は諦ませんでした。強い決意と執念で日本で治療をしてくれる医師を探し出し、事故から1週間後、ホーチミンからのチャーター機で一路関空へ。
世界で5本の指に入る脳神経外科の名医による緊急手術を経て、全身麻痺の状態にあった米田の手足は丹念なリハビリの末、再び動くようになりました。

長年の試行錯誤を経て
辿り着いた、菊の土壌づくり

米田不在の間は、外部の日系農業コンサルタント主導で作業を進めていました。しかし、日本と海外における気候・文化の違いを理解できず、作業は停滞気味に。
2010年3月、米田が現場復帰したのを機に、原点回帰で同プロジェクトを再始動。同年11月、ついに記念すべき第一回目の出荷に至ります。納品先のお客さまからは評判がよかった一方で、新たな問題に直面することに。
「農業の基本は、土作り」。これは、米田が当初から抱いていた構想の原点です。しかし、ダラットの赤土は肥料分が少なく、固まりやすいなど、菊作りに適しているとはお世辞にも言い難い土質でした。そこで、ベトナムにある豊富な資材に着目し、オーシャン貿易オリジナルの土壌改良材作りに注力することに。長年の試行錯誤を重ねた末、菊作りに適した土壌へ生まれ変わらせることに成功しました。
その結果、現在では、安定的に年間を通して供給が可能に。土壌改良材は自然由来の原料を使用しているので、環境に配慮した生産を実現できています。

基本となる経営方針を貫き、
オーシャン貿易を支える
一つの柱へと成長

菊作りの経営には土壌だけでなく、様々な要素に配慮し、ひとつひとつ外堀を埋めていく必要があります。
まず、親株と品種の選び方。親株管理を徹底しないと、高品質な菊を栽培することはできません。現地に日本人技術者が常駐することで、万全の体制で管理し、一定のクオリティーの維持を可能にしています。品種はベトナムの気候に適したものがなかなか見つからず、栽培テストを何度も繰り返すことに。試行錯誤を続けた結果、オランダの種苗会社の最適な品種が見つかり、密なコミュニケーションのもと、今では良好な関係性を構築できています。
次に、人材の育成。高性能な最新設備・環境が備わっているとしても、最終的にそれを運営するのは「人」です。日本とは文化・習慣の異なるベトナムで、日本の消費者が求める高いレベルの品質を理解してもらうためには、現地の従業員への教育が必要不可欠です。JVATでも本社と同様に人材教育を徹底しています。現地で優秀な人材が育つことは、日本の市場で通用する商品の生産に確実に繋がるものです。

運営を開始した当初は、「絶対にうまくいかない」と言われていたJVATプロジェクト。現在では収穫から出荷までのクールチェーンの確立、栽培・加工設備の機械化、合理化を徹底したことで、会社の重要な事業の一つへと成長しました。