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交流こそが平和をつくる

昨年は、紛争と災害の相次いだ1年でした。2年目を迎えるロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘。また昨年2月にはトルコ南東部を震央とした「トルコ・シリア地震」が発生、5万6,000人以上の犠牲者が出ました。9月には北アフリカのリビアを大洪水が襲い、8,000人以上が亡くなりました。

生鮮食品や花卉類の輸出入に特化した商社のわが社にとって、戦争や紛争、自然災害は、ビジネスにダイレクトに影響します。現に、ノルウェーの北極圏で養殖したサーモンの一部を加工委託していたウクライナの水産会社は、戦禍に巻き込まれました。わが社は10万USドルを支援、いち早く水産会社は復興し、昨春、同社の社長夫妻がわが社に謝意を伝えるため来日しました。トルコ地震でも、水産関係の取引先があったことから、トルコ大使館を通じて役員・社員から募った1,062万円を寄付しました。

社長就任2年目の私は、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどの東南アジア各国、スペイン、ノルウェー、ドイツなどの欧州各国そして米国、カナダなど計8カ国を訪問しました。取引先企業への営業拡大や新規顧客の開拓などが主な目的でしたが、ウクライナ戦争や中東の紛争などが、行く先々で経済や人々の暮らしに黒い影を落としていることを実感しました。特に欧州では、ウクライナへの支援疲れのようなムードが漂い、欧州(EU)の枠組みが揺らいでいるように感じました。

日本国内では、コロナ感染症の5類移行後、本格的な景気回復が期待されましたが、原材料価格や物流費の高騰で、エネルギーをはじめ食品などの値上げラッシュが家計を圧迫しました。また日米の金利差などから為替相場は異常な円安が続きました。

わが社は、為替の急激な変動に備えてリスクヘッジしながら、主力の北極圏のサーモンの輸入を充実させ、ベトナムの菊花、コロンビアのカーネーションなどの花卉類も順調に推移しました。ウクライナの水産加工会社への支援も継続し、共同で新たな商材を開発、日本市場の販売開始にこぎつけました。さらにスペインのイベリコ豚の輸入を本格化させる見通しも立ちました。

一方、輸出入のバランスを保つため、日本産生鮮食品の東南アジアへの輸出に力を入れてきましたが、東京電力福島第1原子力発電所の処理水問題の影響で、東南アジアの中国系企業向けの取引が一時ストップしました。徐々に回復しつつありますが、結果的に輸出は減少しました。半面、円安効果から訪日客が増加、国内需要が急増し、結果的に、今期も好成績を収めることができました。

「失われた30年」と言われた日本経済は長年、デフレと低成長に悩まされてきました。かつてGDP世界2位の経済大国も、「世界の工場」として急速な成長を続けた中国に、その座を奪われ、さらに、国際通貨基金(IMF)によると、3位の座もドイツに取って代わられそうです。

確かに活気づく東南アジア各国と比べ、日本経済は低迷しているように感じますが、その潜在力はまだまだ捨てたものではありません。少子化や労働人口減少など問題は様々ですが、喫緊の課題は人材への投資です。

創業50余年のわが社も、人材への投資が第一と考え、昨年は企業理念を体現する優秀な社員には大幅な賃上げを実行しました。その流れを今後も継続したいと考えています。若手社員にも積極的に海外出張をさせ、現場を経験させるとともに、取引先との信頼関係を築くための素養や人間力を養うための研修も実施しています。同時に少人数で最大の成果をあげるために、DXに徹底的に取り組み、業務効率化を図っていきます。

今年も紛争が続き、地球温暖化の影響も予測されます。文化も歴史も、暮らしのあり方も異なる海外の人々とビジネスを通じて交流を図るのが、我々商社パーソンの使命です。小さな力かもしれませんが、コツコツと交流を積み重ねていくことが世界平和につながると確信しています。

創業者の米田多智夫会長の経営理念である「三方良し」(売り手良し 買い手良し 世間良し)を引き継ぎながら、新しいビジネスの種子を播き、地域社会に貢献したいと考えております。

2024年1月
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長

金子 直樹